畑環境は自然なのか

自然に囲まれて、畑で仕事をするのは良いですね、という意見を時折耳にする。
しかし、畑は自然の一部なのだろうか?といつも不思議に思う。

自分の考えから言うと、答えはNOである。畑が自然の一部など、全くとんでもない考えだ。
畑は、人工の環境でしかない。畑を自然環境の一部と捉えるのは、自然からも畑からも遠く切り離された都会人の妄想に過ぎない。最近は、どうやら公園や河川敷でさえも自然の一部と理解されるようである。”緑豊かな”と言うのであれば決して間違いではないと思うのではあるが・・。

”遠く切り離された都会人”と言ったが、決して”遠く切り離された”ことを非難しているわけではない。近代文明において、各々が専門分野に特化し、細分化されていくのは、当然のことである。そして、その結果として、リカードの比較優位説の通り、社会全体の富の生産が増え、社会全体が豊かになっていくのだ。自由主義と資本主義の精神を重んじる自分としては、”遠く切り離された”点を非難するつもりは全く無い。

ただ、良いと思えないのは、理解不足にも関わらず、イメージだけで”妄想”されることなのだ。農家の目線に立って、少し考えて頂ければ、きっとすぐお分かり頂けると思う。現在の田畑は、先祖代々、荒れ地や野山を精魂込めて開拓してきたものなのだ。それを受け継いでいる我々の代であったって、ちょっとすれば草が山のように生えるのに十分苦労していると言うのに、重機の無い時代にどれほど苦労することであったであろう。自然と闘い、克服し、そうしてようやく人間が食べ物を作れる場所が生まれるのだ。夏の炎天下に草取りをしていると、つくづくそう思う。

あと、最近では、畑の環境の生物多様性や生態系の豊かさが言及されるようであるが、これもとんでもない議論であると思っていて、確かに、都市環境に比べれば、生物は多様で豊かであるとは思うのだが、里山に比べれば大したことはないと思うし、ましてや自然林などとは比べ物にならないはずである。何を基準にするかである。つけ加えておくと、現代の農業を行っている畑に、生物の姿は少ない。ミミズなどほぼいないし、虫の姿も少ない。

話としては以上であるが、屋外の空気を吸い、陽の光を浴びて、時には雨に打たれ、サラリーマン時代に比べれば、はるかに自然環境に近いところで仕事をしているのは事実である。それでより健康的なのかどうかは分からないが、仕事をするのに悪い環境でないのは確かである。