アロマフルな話 – オクラ

オクラの花は美しい。
例えれば、黄色いハイビスカスの花のようで、地味や目立たない野菜の花の中で、珍しく立派な花を咲かせるのがオクラである。以前、お客さんに見せてあげようと思って、摘んでみたこともあったが、みるみるうちにしぼんでしまい、結局、誰にも見せることが出来なかった。オクラの花は咲いた日の午後にはしぼんでしまうらしい。畑でしか見れない、貴重な花である。
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さて、そのオクラであるが、ちょうど旬を迎えている。8月の一番暑い時に、他の野菜が暑さでだめになっている中、むしろ元気を増しているのがこのオクラである。その伸びるスピードは凄まじく、ちっちゃかった実が翌日にはとんでもない大きさになっていたりする。ほぼ毎日、採ってあげなければいけない。

オクラは結構人気のある野菜だと思う。手軽に食べることができ、夏バテで疲れたときネバネバ系の栄養満天な野菜は、この時季ぴったりなのだと思う。その人気と裏腹に、一般に知られていないのが、実はオクラもとても鮮度が大事な野菜であるということである。冬場などは、東南アジアから輸入されたものも並ぶくらいであるが、採ったその日のオクラを食べたことがあるものとしては、絶対に他のオクラには手を出そうと思わないくらいである。採り立てのオクラは甘く、これまでに食べたことのあるオクラとは全く味が違う。採ったその日のものなら、生で食べることをお勧めしているくらい。(実際、自分はチェックの意味も含めて、畑で収穫中にかなりオクラを生で齧っている。)そして、収穫翌日には、その甘さは一体どこへ行ってしまったのか、全く感じられなくなり、普通のオクラと同じになってしまう。それでも決して悪いものではないのではあるが、そのため、できる限りお客様にはお買い上げ当日に調理、あるいは召し上がって頂ければと思っています。

当園で作っているオクラは、島オクラという沖縄在来のオクラで、大きくなってもやわらかく、美味しく食べれるのが特徴です。あと、断面が丸く、表面の毛が気にならないのも特徴です。当園のオクラを初めて見られた方は、その大きさにびっくりされるのではありますが、問題なく召し上がれます。むしろ、大きいほうが個人的には味が良いように思います。ただ、大きいものは、中の種も大きくなっているので、種を気にされる方は、小さいものを選ばれる方がよろしいかと思います。また、大きくなると稀にスジが入るものもあり、そのようなものが混ざった場合には申し訳ないのですが、その分を見越して大きいものは少し多めに詰めさせて頂いております。

ぜひ当園の採り立ての甘いオクラを生で豪快に齧ってみて下さい。

脱サラをして農業を始めるということ

自分の考えを並べる前に、人からどう言われるかを書こう。
「サラリーマンを辞めて農業を始めた」と人と話しをすると、大体、以下の3パターンのどれかの反応が返ってくる。

1つめは、眉をひそめた、困惑と同情が入り混じった表情。
そのような人からは、「大変だね」、「どうしちゃったの」というのが第一声となる。安定したサラリーマンを辞めて、ハイリスクな業界に転進することに、疑問を抱く人たちである。日々の仕事には色々あるだろうけど、安定を捨ててまで・・、というのが根本の考えのようである。このブログの前項でも書いたように、一般的に考えれば農業をすることは大変なことで、理性的でまともな判断であるとは思う。

2つめは、目が一瞬大きく見開いて、感心と羨望が浮かぶ笑顔。
そのような人からは、「すごい」、「いいなあ」と言われる。会社から無駄なストレスを受けずに済み、自らのしたいことをしたいようにできるというのが、その理由のようだ。会社で仕事をすることは、確かに、各方面から大きなストレスを受けることでもある。そのような会社を飛び出して、自らのしたいことに突き進むのは、輝かしく見えるのだろうか。

3つめは、やや見下した感じで投げかけてくる質問。実はこのタイプは農業関係者で見られる。
その質問の内容は、「会社での仕事は辛かったの?」である。不安定な農業業界に転身してくるのだから、よっぽど前の会社での仕事が嫌だったのだろうと思う人たちである。実はこれは、皮肉な見方なのではなく、実際に、会社が嫌で農業を始めた人が多いことの裏返しである。脱サラ就農者は、既存の農業関係者から警戒されているのである。

さて、では、自分が脱サラをして農業を始めるということをどう思うか。

前述3様の反応は、全てまともだと思う。ごく自然な反応である。農業をすることはとても魅力がある、しかしハイリスクかもしれない。一方、サラリーマンとして勤めることは、苦労も多いだろう、しかし安定している。しかしながら、本当にそうなのか?仕事上の魅力と安定はトレードオフなのか?

自分は全くそう思っていない。(前の)会社での仕事は総じて魅力的であった、良い職務内容であった。もちろん、文句もストレスも十二分にあった。しかしながら、むしろそれらを楽しんでこその会社勤めであった。一方、農業がハイリスクだとはあまり思っていない。ビジネスとしての成功可能性については本ブログ前項掲載の通りである。

安定して、色々ありながらも良い仕事をさせてもらっていた会社勤めを辞めてでも、農業を仕事してすることに価値がある、というのが結論になるであろうか。そして、農業を始めるということは、転職していることと同じであるから、自らにとって全ての面でアップするようにしなければならないと思っている。

農業を始めようと思ったわけ

記念すべき第一回の投稿は、「なぜ農業を始めようと思ったのか?」について記そうと思う。なぜなら、人と話しをすると、必ず聞かれることだからだ。

答えは、何よりも、ビジネスチャンスだと思うから、である。このように言うと、皆、不可解な顔をする。それも当然である。農業というのは、苦労ばかりで儲からないというのが、世間で一般に思われていることだろうからである。
この考えを裏付けるデータはいくらでもある。例えば、都府県の野菜農家の農業から得る利益(所得)は、年217万円。(農林水産省 平成21年 個別経営の営農類型別経営統計―野菜作)そして、これは農家1人の稼ぎではない。農家1世帯での稼ぎなのだ。この額を稼ぐための平均労働力は2.33人で、1人あたり93万円である。さらに言うと、総労働時間は3542時間、時給に換算すると最低賃金を下回る、685円/時。場合によっては、農家が365日休みなく朝から晩まで働いて、年収100万ということも有り得なくはないのだ。(誤解を避けるため、農家には農外収入もあり、暮らし向きが悪いわけではない。それについては、また別の機会に触れたいと思う。)

別の視点からも見てみよう。このようなフレームワークを使うまでもないのだが、有名なボストンコンサルティンググループの成長率・市場占有率マトリクスを使ってみれば、農業という世界がどういう市場なのか良く分かる。
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農産物市場は、現在の日本では明らかに縮小市場、マイナスの成長率である。そして、各農家にとって、マーケットシェアなど皆無に等しい。各農業経営体にとって、負け犬市場でしかない。普通なら、事業の撤退を考えるべきところ、新規参入などとても有り得ないのだ。

しかしそれでもビジネスチャンスだと思う。理由は、消費者の思いと遠くかけ離れたところで、農業の生産が行われているようにしか見えないからである。ここをあまり詳しく書くと経営戦略の要をさらすことになってしまうので避けるが、そのギャップを埋めていくことができれば、結果としてビジネスとしても成功するのではないかと思っている。

農業を始めようと思ったわけには他にも、起業したかったなどもあるが、「ビジネスチャンス」を実現したいと思っている。

「おもしろきこともなき世をおもしろく すみなすものは心なりけり」     -高杉晋作

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農業の現場で起きていることは、一般に思われていることやメディアの報道とは相当違う。そのようなギャップを冷静且つ論理的に、そして時に日本社会全体まで俯瞰して、書き綴っていくブログです。
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