アロマフルな話 – とうもろこし

今回は、もう名残になってしまったけれど、とうもろこしについて。
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とうもろこしも自分が農業を始めて、その概念が大きく変わった野菜の1つでした。正直、これまでそんなに有難い野菜と思ったことありませんでした。そもそも、それほど買ったことも食べたこともなく、お祭りで焼きとうもろこしが随分高い値段で売られている、それくらいだけのイメージしかありませんでした。しかしそれが、今ではこんなに感動を与えてくれる野菜なのだから、全く人生何が起こるか分からないものだと思います。

さて、こんなに印象が変わったとうもろこしですが、その理由は、これまで新鮮なとうろこしにありつく事が出来なかったから、というしごく単純、しかし実現がかなり難しい、ということに尽きると思います。とうもろこしは、数ある野菜の中で、間違いなく最も鮮度が落ちるのが早い野菜。採り立てとそうでないものでは味が全く違う。とうもろこしを本当に美味しく食べられるのは、採って半日まででしょう。

採り立てのとうもろこしがどう違うのかというと、甘さが数段違い、そして口の中で文字通り弾けるほどのみずみずしさに満ち溢れている。野菜と言うよりほとんど果物で、さらに言うとハチミツのようで。当園では、採りたては、まずは生でそのままかじるのをお勧めしています。生でとうもろこしを食べれると聞いて、大抵のお客様は驚かれるのですが、折角の採り立てなので、また、わざわざ茹でるのも手間なので、生で召し上がられるのをお勧めしています。もちろん、火を通して食べても美味しく、甘さにコクが増し、より一層甘く感じられます。お勧めの調理方法は、蒸しで、なべ底に少し水を張り、蓋をして沸騰している状態の中で3分が良いと思います。蒸し終わったら、流水で粗熱を取ると、実の潰れを避けることができるので、おススメです。

以前、テレビで朝採れとうもろこしの方が昼や夕方に採ったとうもろこしより甘くて美味しいという内容を見たことがあるのですが、それは間違いではないかと思ています。その番組ではその理由を、昼間気温が上がると、とうもろこしの樹が呼吸でエネルギーを消費するのに実に溜まっている糖分を消費してしまうから、朝、糖分が溜まっている状態のとうもろこしの方が甘い、としていました。しかし、実際、過去に自分で糖度を測定したところ、同じ実で、朝一より昼の方が糖度が高い結果でした。また、朝というのは、夜の間にエネルギーを消耗しつくした時間であるはずであり、一番味が落ちている時間ではないかと思います。(実際、他の多くの野菜で朝一は味が落ちる。)最後に、多くの消費者は買い物をした日の夕食でとうもろこしを調理、食べることになると思いますが、鮮度で一分一秒を争うとうもろこしで、夕食までずっと時間が開く朝に採って良い訳がないのではないでしょうか。きっと、テレビで検証していたのは、朝採ったとうもろこしと、前日の昼や夕方に採ったとうもろこしを比べていたのはないでしょうか。そうとしたら、直近に採った朝採りとうもろこしの方が味がよくなるのは当然の結果でしょう。通常、農家は出荷が朝一なので、朝取りと前日昼・夕方採りを比べるのは、決して間違っているわけではないのですが・・。

そんなこんなで、とうもろこしは鮮度が何よりも大事なので、当園では、本当に納品直前に収穫しています。採り立て数時間のとうもろこしは、現代の流通システムでは絶対に手に入らない、大変貴重なものと思います。農家のみに許された、本当に美味しいとうもろこしを、機会がありましたらぜひお試し下さい。