夏ノ暑サニモマケズ

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ

よく知られた、宮沢賢治の詩の冒頭である。
自分で農業をするようになって、この詩を畑でよく思い出すようになった。
正にこの通りだと思うからである。
雨が降ろうと風が吹こうと、するべきことをするのみであるからである。

天候・気象、これらの捉え方は、サラリーマン時代から大きく変わった。現代人の生活は自然から隔絶された暮らしをしている、ということをここで論じたい訳ではない。ただ、これまで研修時代から農家の話を聞いたり、自分で見たり感じたりしたことが、それまでの自分の人生において感じていたことと大きく異なり、大変興味深かった。だからそのギャップを時折書き表すのもいいのではないかと思う。新連載「雨ニモマケズ」。
今回は、ここ数日、猛暑が続いているので、タイムリーに「夏ノ暑サ」について。

畑をやっていて、苦労する天候・気象は色々ある。冬の寒さ、春の大風、秋の台風・・、もちろん他にも色々あるが、夏の暑さが農家が一番苦労する気象なのではないかと思っている。

単純には、暑くて作業が大変、ということなのだが(実際、夏に体調を崩す農家の人も多い)、それ以上に大変なのは、夏の暑さに伴う乾燥である。普通に暮らしている分には、水不足の報道でもない限り、特に気にすることもないのだが、猛烈な暑さの晴天がずっと続き、1ヶ月以上、一滴の雨も降らないなんていうことが普通にあるのだ。すると、畑の作物に深刻な影響が及ぶ。トマト・ナス・きゅうりなど実が生る物は生育が悪化し、そのままだと、採れるものが無くなってしまう。とうもろこし、枝豆は実が入らなくなってしまう。葉物は伸びなくなり、筋張って固くなる。また、そのような年は、さといもが不作となる。もちろん、できる限り水を撒くのではあるが、雨の降る量に比べれば、たかが知れていて、夏の暑さと乾燥が続くと、とんでもない不作となるのだ。宮沢賢治が「ヒド(デ)リノトキハナミダヲナガシ」と詠んだのも正にその通りなのである。

それが今年に限っては、梅雨明けが2週間以上早い。しかも梅雨時に雨が少なかった。通常、1ヶ月の乾燥に耐えればいいところが、2ヶ月になってしまった。これは大変なことである。

それでも何とかやって凌いで行こうと思う。農業を始めようと思ったときに、既に分かっていたことである。また、天候を言い訳にすることだけはしたくないと思っている。夏の暑さには負けられないと思っている。台風でも良いから雨を願いつつ・・。