低い食料自給率は問題なのか-その4(完結編)

ちょうど昨日、平成24年度の食料自給率が39%で横ばいであったと発表があった。これまでの議論の通り、極めて屈曲した食料自給率の議論など早く止めるべきだ。本当にそう思う。

さて、今回は、「低い食料自給率は問題なのか」最終編、国際比較から分かる食料自給率について。

まずは、国際比較されたときに一番初めに出てくる表を載せよう。これは農水省が発表している”先進国の中で最低の水準となって”いることを示す表である。
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この表をみれば確かに日本が一番悪いように思えてくる。しかしながらである、まず初めのつっこみとしては、大陸型の穀物を大量生産しているアメリカ、フランス、ドイツ、イギリスなどと比較すれば、カロリーベースで日本が1人負けするのは当然であろう。

そこで、前の議論等しく、カロリーベースから金額ベースで見直してみる。以下のグラフは、私がFAOの統計から作った国民1人当たり農産物輸入額(ドル、2012)である。
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これを見たら、多くの方が驚かれるに違いない。これまで見慣れてきた上の絵とは全く違うからだ。このグラフが示していることは、日本は世界的に見て農産物の輸入の多い国ではないということだ。また、何度か挙げた本「日本は世界5位の農業大国」によると、輸入額のみならず、輸入量でも上記順番で変わることがない。真実は、”日本は農産物の輸入の多い国ではない”。 一体、日本は食料の大半を海外に依存しているなど、誰が言い出したのであろうか。

先ほどのグラフをもう少し深く読んでいこう。ドイツ、イギリス、フランスの各国が輸入額が日本より多いのは、これは野菜の輸入量が多いからだ。欧州の北側に位置するこれらの国々では、冬季に野菜が作れないため、南欧や北アフリカ諸国から大量の野菜を輸入している。また、それらの国では、コスト競争力が高い。

そこで気になるのだが、ドイツ、イギリス、フランスの国々が、農産物の輸入量が多いことを問題にしているだろうか?カロリーは足りている国々であろうが、カロリーだけあっても野菜もなければ人間生きてはいけない。そこで例えば、野菜の自給率が低いなどと、国際的に主張しているだろうか?翻って、日本のカロリーに限定した議論は何と一面的なことか。

あと、農水省で発表されている一番初めの表にはもう1つ、追加されなければいけない点がある。それは、オランダの食料自給率である。農水省の発表によると65%(2009)、日本よりは高いようだが、オランダは世界第2位の農産物輸出国であるにもかかわらず、この数字である。日本でもスーパーでオランダの色とりどりのパプリカを常に見るようになったが、オランダは、園芸作物、トマト・パプリカなどで国際的に競争力がとても高い。そのオランダ自身は、農業の競争力が高いにもかかわらず、自給率はそれほど高くない状況を問題視しているのだろうか。その様なことはないだろう。産業としての農業の成功と、食料自給率は相関しない。オランダの食料自給率の事実は、そのことを意味しているのではないか。さらに言うと、オランダの事例は日本の農業が今後進むべき道を指し示しているのではないだろうか。

長きに渡って、食料自給率の問題を取り上げてきた。一般に良く言われる日本の低い食料自給率が、いかに問題とすべきでないかは、よくお分かり頂けたのではないかと思う。日本の世論、農業政策が、屈曲した食料自給率などという議論から離れ、将来の日本の農業をどうすべきなのか、どう強化していくのか、冷静で論理的に正しい議論が行われることを強く望んで止まない。